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「よさそう」×「できそう」2つの期待がモチベーションを創る

人が目標に向かって行動を起こす際に、2種類の期待が働く(Bandura,1977)。

これは、自己効力感の研究で著名なBanduraの言です。2種類の期待とは、1つが、結果への期待、そしていま1つは、自分の力に対する期待です。

非常に雑駁に言ってしまうと、『その結果は「よさそう」だ』という期待と、『自分ならそれが「できそう」だ』という期待です。2つの期待が両方あると、モチベーションが形成され、目標の実現に向けて行動を起こせるというわけです。

菊入 みゆき (きくいり みゆき)

菊入 みゆき
ワーク・モチベーション研究所 所長
モチベーションコンサルタント

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「よさそう」と思えるか、思わせているか

まずは、目指す結果が、魅力的でなければモチベーションは高まりません。「確かに、その結果が得られるなら、やってみよう」と思える、「よさそう」な結果があることが大事です。その仕事をやり遂げれば、「職場での評価が上がる」「給料がアップする」「大きな達成感を得られる」等です。

皆さんの職場では、目指す目標に対して、メンバーの方々が「よさそう」と感じているでしょうか。

ここで重要なのは、人によって「よさそう」の判断軸が違うことです。「給料に反映されないなら意味ない」という、お金第一の人もいますし、「お金よりも、自分自身の満足感が大事」という人もいます。若年層は、「自分が成長できるか否か」が判断軸になっていることも多いです。また、人間関係が大きく関わることもあります。「職場の人たちに迷惑をかけたくない」「職場内で与えられた役割をまっとうしたい」等です。

1人1人がそれぞれの事情を抱えつつ、「よさそう」だと思って、目標に向かうことが大事です。そのためには、上司などの管理者は、1人1人の価値観や環境に配慮して、目標設定をし、また目標がその人にとってどのような意味があるかを納得してもらう必要があります。

私は、社内でモチベーションに関する研究会を開催していますが、先日初めて参加した方が、「この内容なら、自分の仕事に役立つので、ぜひ次回も参加したい」と言っていました。これはまさに、仕事に利用できるという「よさそう」を実感し、次回への参加のモチベーションが高まったという事例です。ちなみに、その他の参加者の「よさそう」も、「内容そのものが面白いから」「自分のやっていることを振り返ることができるから」等、様々でした。同じ会に参加していても、それぞれの「よさそう」は違うのです。

「できそう」感はリアルタイムで感じること

そして、どんなに「よさそう」であっても、まったく「できそう」にないのであれば、モチベーションは起きません。「できそう」感を形成する要因は、成功体験です。過去の成功体験も重要ですが、リアルタイムの成功体験はより強力です。目標に向かって最初の一歩を踏み出し、その一歩が、なんらかの変化を引き起こした。これも「できそう」感です。その時に、自分自身も「できた!」という感覚をかみしめることが大事ですし、まわりの先輩や上司が、「できたね!」と承認することが大切です。

失敗した場合も、大きな次の「できそう」を創造するチャンスです。「今回やったことが、1つのデータになった」「どうすれば、次は成功するだろう」と考えることができますし、上司が問いかけることができます。

ある優秀な事業部長は、部下から報告された行動プロセスのメモにじっくり目を通し、翌日、「ここはどうしたらいいと思う?」と、部下と直接やりとりをするそうです。メモを見せてもらいましたが、事業部長がつけたラインマーカーの跡が多数あり、付箋がびっしり貼ってありました。これだけ上司が親身になり、一緒に今後のことを考えてくれるのです。こうしたアプローチは、部下の「できそう」感の向上に大きく貢献すると考えられます。

「よさそう」と「できそう」のバランス

人によって、また、その人のキャリアの段階によって、「よさそう」が大事か、「できそう」が大事かは違います。経験が浅い時や、若年層の場合は、「できそう」の重要度が高いこともあります。できることから、段階を追って1つずつ積み重ねることが大事な時期、ということでしょう。業務に慣れてきたら、「できそう」よりも、「よさそう」にシフトし、高い目標にチャレンジすることも必要な時期がやってきます。 

管理者は、「よさそう」と「できそう」のバランスに目配りして、目標設定や権限移譲をする必要もあります。

「よさそう」×「できそう」=モチベーション。この枠組みは、シンプルで使いやすいと思います。自己成長の促進、部下の育成に、ぜひ活用してください。

参考文献:Bandura, A.(1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84, 191-215.

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