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いま一度、「承認」について考える

 

 

 

 ほめる技術、部下の効果的なほめ方など、「ほめる」という言葉を、書店や人事系のニュースサイトで目にします。ほめることは、組織において「承認」の役割を果たし、ほめられた人が仕事への満足感を高める要因になります。

 しかし「承認」は、使い方によっては望ましい効果だけでなく、望ましくない効果を持つ場合があります。いま一度、承認について考えたいと思います。

 

 
菊入 みゆき (きくいり みゆき)
菊入 みゆき
ワーク・モチベーション研究所 所長

モチベーションコンサルタント

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承認のダークサイト

 ほめられると、多くの人は嬉しく、誇らしい気持ちになります。自分の仕事が認められた、承認されたと感じるからです。成果に対して与えられるインセンティブ(褒賞)や表彰なども承認の一つの形態です。人はもともと、認められたいという承認欲求を持っており、それが満たされることで満足感を持ち、これがモチベーション向上にもつながるとされています。 

 これは、承認のブライトサイド、明るい側面です。しかし、実は承認にはダークサイドも存在します。承認されることが目的になってしまうと、逆にモチベーションが下がる場合もあるからです。

 内発的なモチベーションは、自分で自分の行動を決めているという自己決定感を持つことが重要です。ところが、承認されるためにがんばるという意識が続くと、自分で自分の行動を決めていると言い切れなくなります。自分の行動が、承認者によってコントロールされている、自分の自由にはならないという感覚が芽生えてきます。自分のパワーを小さく感じたり、無力感を持つ場合もあります。

 

 

 

 

承認パワーが憂うつにつながることも

 調査では、憂うつなコミュニケーション相手は、会社員にとっては「上司」、大学生にとっては「先生・教授」でした。これは、どちらも承認されることが必要な相手です。主婦にとっての「義父母」も、ある意味そうかもしれません。承認したりしなかったりすることで、自分の行動を制限する相手に対して、憂うつな感情が湧いてくると考えられます。

 

 

コミュニケーションが憂うつな相手
コラム表②

 

(JTBコミュニケーションデザイン実施調査「コミュニケーション総合調査<第2報>」より)

 

 

 

承認のブライトサイドを機能させる

 承認のダークサイドをブライトサイドに転換するにはどうしたらいいのでしょうか。 

 従業員が、自己決定感を持てるような環境を整えることが大切です。上司が、自分の好き嫌いや気まぐれで承認したりしなかったりすると、部下は翻弄されていると感じ、自己決定感を持てません。承認の基準を明確にし、承認される側が納得できるように話し合いの場も持ちましょう。そうした納得感が持てれば、従業員も主体的に「その基準を目指そう」と思えますし、自己決定感を持ちやすいのです。目標を自分自身で設定し、これを達成すれば評価されるという目標管理制度を設けている会社もあると思います。これは、きちんと運用すれば、承認のブライトサイドを実現できる制度です。

 

 

 

 

どこに焦点を当てるか

 どこに焦点を当てて承認するかにも配慮をしましょう。人は、変えられる要因、且つ自分自身の内的な要因がものごとの原因だと考えると、モチベーションが高まりやすいという研究結果があります。変えられる内的な要因とは、自分の行動や考え方、工夫などです。これらが原因となって、成果が決まるのだと思えれば、「行動や考え方を改善してがんばろう」と思えます。しかし、環境や持って生まれた資質など、外的な要因や変えられないことをものごとの原因だと考えると、がんばってもどうしようもないと感じ、モチベーションは起こりません。

 「お客様の状況をよく調べたことが、成果につながりましたね」「明るい声であいさつをしてくれるから、職場のムードが良くなったよ」という言い方であれば、変えられること、その人自身の行動や意識に関することに焦点が当たり、それが原因で成果が出たことが印象付けられます。モチベーション向上につながると考えられます。

 

 

 

 

上司と部下の権威勾配

 上司の権威が強すぎて、部下の権威との差がありすぎる、権威勾配が大きい場合には、部下の満足度やモチベーションが低いとされます。この場合は、承認もダークサイドの色合いが濃くなる危険があるでしょう。部下は、権威の強い上司の承認を得るか否かに意識を注ぎすぎ、承認が目的化しやすくなるからです。上司から声をかけたり、部下の意見を聞き、取り入れたり、権限を委譲したりすることで、権威勾配を適切な大きさに保つことで、承認がうまく機能するようになります。

 ほめることの功罪を理解し、適切にほめることで、モチベーションの高い職場を作りましょう。

 

 

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